「同じ方向を向いて歩く」が夫婦円満の秘訣 ドラマ「ウチ夫」名セリフ | かなこの「恋はときどき」

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 向き合うのではなく、同じ方向を向いて歩くのが夫婦円満の秘訣――関ジャニ∞の錦戸亮が、奮闘するダメリーマン小林司を演じる「ウチの夫は仕事ができない」(日テレ系、土曜22時~)。8月12日放送の第6話は「喧嘩をすること」がテーマ。妻とも会社でも初めての対決を経験した主人公は、家庭でも仕事でも同じ目標に向かって進むことが大事だと気付いた。

 

今回、司と妻・沙也加(松岡茉優)は初めての夫婦喧嘩をする。きっかけは些細な事だ。「雨降って地固まる」から「夫婦に喧嘩は必要」だと沙也加に話していたマタ友(妊婦友達)たちは、妻から詫びを入れるのが当たり前にならないように、仲直りの仕方こそ重要だ、と沙也加をたきつける。

 

一方で司は、会社でも、社内の規則を曲げてもらうために他部署と闘うことに。「会社や仲間を守るためには、喧嘩しなきゃならない時だってあるんだよ」と黒川先輩(壇蜜)には言われるが、「喧嘩なんてお互い傷つくだけじゃないですか」と乗り気ではない。

 

これまで妻とも会社でも喧嘩をしたことがなかった司。喧嘩する前は、「ルールを守ることだけが仕事ですか」と上司には反発し、「僕は過ぎたことって仕方がないと思うんだけどな~」と妻には話していた。沙也加は妊トモから「本音をさらけ出してない」と指摘されていた。司と沙也加はお互いに、ぶつかりたくない、相手も自分も傷つきたくないと、引いてしまう。その関係は、夫婦生活というより、おままごとのようでもあった。

 

喧嘩の後、関係修復のヒントを求めて、沙也加がSNSで実家の母に相談する。その答えが冒頭のセリフだ。「よく言うでしょ、夫婦は向き合うんじゃない。同じ方向を向いて歩くんだ、って」

 

脚本家の渡辺千穂はさすが(自身の経験もあって?)、夫婦の機微を心得ていると思う。互いに真正面から向き合ってしまうと、敵対の構図になってしまう。そうではなく、夫婦が隣り合って共同で一つの目標に向かっていけば、同士の間柄になれる。結婚によって、「向き合う恋愛から、隣り合う夫婦へ」と、関係性の変化が必要になる、ということだ。

 

ドラマでは結局、司夫婦は互いに謝って仲直り。会社では、司が腹をくくって上層部に直談判し、例外を認める稟議書が通った。実は、会社での喧嘩は、「できない」司を育てるためのデキる上司(佐藤隆太)の作戦。この件をあえて司に担当させ、ただし陰でフォローもしていた。こういう上司が欲しい!と思わせる、良い上司の見本でもある。

 

 ここまでの展開で、司は、家庭でも会社でも、嘘や隠し事のない関係性を築き、妻や社内外の信頼を得てきた。喧嘩は時には必要だとはいえ、信頼のないところでは喧嘩はできない。信用のおけない相手とは、本気では闘わないからだ。本音で向き合い、正面からぶつかる喧嘩が、司はようやく、会社でも家庭でも「できる男」になった、ともいえる。

 

妻の最後の独白はだから「ウチの夫は仕事ができない。でも優しくて強い」。優しくて許容量が大きく、不必要な喧嘩はしない。でも逃げる訳ではなく、ちゃんと向き合い、本当に必要な時には闘う強さも持っている。

 

優しいだけじゃない司は、なんだかんだ言いながら、一歩ずつ理想の夫へと成長している。

 

(2017・8・13、元沢賀南子執筆)