◎「へだち(隔ち)」(動詞)
「へたち(辺・重)立ち)」。「へ(辺・重)」は独立した経験進行→「へ(辺・方・重)」の項。「たち(立ち)」は発生すること→「たち(立ち・発ち・経過ち)」の項。A・B間にAにもBにも属さない独立した経験進行が発生した場合、AとBは、物的な意味であれ、意味としてのそれであれ、遊離する。他動表現「へだて」。その「へだて」の客観的情況にあることが表現された自動表現「へだたり」。
「はろはろに思ほゆるかも白雲の千重(ちへ)に隔てる(へだてる:邊多天留)筑紫の国は」(万866:「へだち(辺・重)立ち)」に完了の助動詞「り」)。
「たぶてにも 投げ越しつべき 天の川 隔てれば(へだてれば:敝太而礼婆)かも あまたすべなき」(万1522:「たぶて(礫)」はその項)。
「是(これ)ハ一向専修ノ餘ヲ(余を:ほかの宗派を)ヘタチテキラフ風情也」(『沙石集』:自己には属さないものとして分離し嫌う)。
◎「へだて(隔て)」(動詞)
「へたち(辺・重立ち)」(その項)の他動表現。→「へ(辺・重)」の項。「明日をへだてて」(明日から別れて)。
「月見れば同じ国なり山こそは君があたりをへだて(敝太弖)たりけれ」(万4073)。
「新手枕(にひたまくら)の心くるしくて、「よ(夜)をやへたてむ」とおほしわつらはるれはいと物うくて…」(『源氏物語』「あふひ(葵)」)。
「かねてよりへたてぬ中とならはねとわかれはおしき物にそありける」(『源氏物語』「みをつくし(澪標)」)。
◎「へだたり(隔たり)」(動詞)
「へだて(隔て)」の自動表現。隔てた情況にあること。
「心ゆも我は思(も)はざりき山川も隔(へだ)たらなくにかく恋ひむとは」(万601)。
「あはれもさめつゝかく御中もへたゝりぬるを…」(『源氏物語』)。