◎「へそ(臍)」

「はへしを(葉経為緒)」。「は」は無音化した。「し」は、過去を表現する助動詞ではなく、動詞。その連用形。「は(葉)」は時間を意味する→「はは(母)」の項。「を(緒)」は線状の長いもの。「はへしを(葉経為緒)→へそ」は、時の経過を実行している(実現している。目で見える現実として現している)線状の長いもの、ということ。どういう意味かというと、時(とき)の経過、とは、生命(A)が生まれ、その生命から次の生命(B)が生まれ、その生命から次の生命(C)が生まれ…という長い長い歳月であり、そのAの人生という経過、Bの人生という経過、Cの人生という経過の全体たる経過たる時(とき)の経過を実行している(実現している。目で見える現実として現している)線状の長いもの、が「はへしを(葉経為緒)→へそ」。この語は人の母体とその体内で発生し育つ子の体を生命現象として一体化している管状の器官(太さ約2センチ、長さ5・60センチ)の名であり、子が母体から出たのち子体からも母体からも離れるが、子の体にそれがついていた部分たる腹部中央のその痕跡も「へそ」という(その結果、管状の器官はべつに「へそのを(臍の緒)」とも言われるようになる)。

・「ほぞ(臍・蔕)」

「へそ(臍)」は別名「ほぞ(臍・蔕)」とも言う。古くは清音で「ほそ」。これは「はおしを(葉推し緒)」。時(とき)を推し進める(子を生かす)線状の長いもの、の意。意味は「へそ(臍)」と同じようなもの。この「ほぞ」という語は、木組みにおいて、一方の材に穴をあけ、他方に凸部をつくり、これを接合する場合は凸部をそう呼び、底柱に丸穴をあけ、戸に円柱状の凸部をつくり、穴に凸部を入れ戸を開閉させる場合(回転装置全体の名は「くるる(枢)」)は、穴を「ほぞあな」と呼んでいる。石臼では、その中央に丸穴をあけた上段石を回転させる回転軸になる下段石の凸部を「ほぞ」と言う。果実では、幹や枝から出た芯状の細い枝の先に実がなり、実とその芯がついていた、実にあるその痕跡が「ほぞ」と言われる。果実でいえば、幹や枝が母体であり、そこになる実は次世代の子になるものであり、その母体と子を生命現象として一体化している細い枝状の器官(花茎にあたる部分)が、(紐状の器官という意味での)「へそ」や「ほぞ」であり、実に残るその痕跡も「ほぞ」と言われる。

「膍臍 ………和名保曾(ほそ) 俗云倍曾(へそ) 腹穴孔也」(『和名類聚鈔』)。

「磨(みが)き上げた、柾(まさ)の柱に象牙(ざうげ)の臍(へそ)をちよつ押すと」(『野分』(夏目漱石):凸部を「へそ」と言っている)。

「卽(すなは)ち軻遇突智(かぐつち)、埴山姬(はにやまびめ)を娶(ま)きて、稚産靈(わくむすひ)を生(う)む。此(こ)の神(かみ)の頭(かしら)の上(うへ)に蠶(かひこ)と桑(くは)と生(な)れり。臍(ほそ)の中(なか)に五穀(いつくさのたなつもの)生(な)れり」(『日本書紀』:この「ほそ」は腹部中央の凹部たる(稚産靈(わくむすひ)の)「へそ(臍)」ではないだろう。埴山姬(はにやまびめ)と稚産靈(わくむすひ)を一体化している臍(へそ)の緒(を))。

「蔕 ホゾ」(『雑字類書』:「蔕(タイ)」は『廣韻』に「草木綴實」とされる字。つまり母体(幹)と子(実)をつなぐ小枝状の器官(花茎))。

「疐 …棗李之類皆有疐…和名保曾(ほそ) 今案疐蔕相通」(『和名類聚鈔』:果実の「ほそ」)。

「ヘソヲホソト云ヘトモ、陰(男根)ヲモホソト云フ」(『塵袋』(1300年代後半):「ほぞ」は凹部も凸部も言う。上記のように、木材を組む場合などは凹部に入れる凸部を「ほぞ」と言う。しかし、その原意は母体たるAと子体たるBをつなぎ生命として一体化しているその線状・紐状部分)。

 

◎「へそ(巻子)」

「へそ(綜麻)」。「へ(綜)」も「そ(麻)」もその項参照。「へ(綜)」は織物の縦糸をかける棒状の具ですが、この語が、「へ」に用いる糸も意味し、その「へ」用の(長い)麻糸が巻きまとめられたものが「へそ(綜麻)」ということ。

「「赤土(はに)を床の前に散らし、閇蘇(へそ) 此二字以音 紡麻(を)を針に貫(ぬ)きて、其(そ)の衣(きぬ)の襴(すそ)に刺(さ)せ」」(『古事記』:この糸をたどり、帰る衣の主の居所をさぐろうとするわけですから、この糸はそうとうに長い)。

「巻子 ………閉𧁨…………續麻圓巻名也」(『和名類聚鈔』:「𧁨」は「本書「蘇」」とされる字。つまり「閉𧁨」は「へそ」)。