◎「ふぢ(藤)」

「ふつつり(ふつ吊り)」。「つ」の連音は濁音となり「り」の子音は退行化し「ふづい」のような音(オン)が「ふぢ」になった。語頭の「ふ」は「ふと思う」などのそれであり、感覚発起による発生を表現するそれ→「ふ(経過…)」の項。この語が、それが客観的な確固たる物的存在としてたしかにそこにあるのかふと不安になるような存在であることを表現する。つぎの「つ」は同動・連動を表現する助詞のそれ→「つ(助)」の項。たとえば「ときつかぜ(時つ風)」の場合、時(とき)とある、時(とき)を得ている、風(かぜ)、のような意味になる。「ふつ吊(つ)り」は、「ふ」とある吊(つ)り、のような意味。「つり(吊り)」は連動・同動を表現するそれ→「つり(釣り・吊り・攣り)」の項。この場合は「連(つ)り」と書いてもいい。つまり、「ふつつり(ふつ吊り)→ふぢ」は、客観的な確固たる物的存在としてたしかにそこにあるのかふと不安になるような連動するもの。これはある植物(植物学的にはマメ科樹木・日本固有種)の名ですが、その花の印象による名。

「ふぢごろも(藤衣)」という語もありますが、これは蔓(つる)性植物の皮の繊維による布であり、粗末な衣類とされる。

「春へ(波流敝)咲く藤(ふぢ)の(布治能)末葉(うらは)のうらやすに(心安に)さ寝る夜ぞなき子ろをし思(も)へば」(万3504:東歌。「春へ(波流敝)」は「春重(はるへ)」か。春が幾重も重なって。「末葉(うらは)」は成長先端の葉ですが、藤のそれがなぜ「うらやす(心安)」なのでしょうか。それ以下の分かれた二が先端で一にまとまっているからか。『源氏物語』の帖名(三十三帖)にも「藤のうらは」がある)。

「春日野の藤(ふぢ)は散りにて何をかもみ狩(かり)の人の折りてかざさむ」(万1974:「み狩(かり)の人」は、いわゆる「薬狩(くすりがり)」と言われる、鹿の角や薬草などを採取する行事。これに参加する人は髪に藤の花を飾ったらしい)。

「恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波(ふぢなみ)今咲きにけり」(万1471)。

 

◎「ぶち(斑)」

「ふふうち(班斑打ち)」。多数のを打っている(現している)ということ。たとえば動物の体表の毛の色がまだらのような状態になっている。「ふ(班)」「うち(打ち)」はそれぞれその項。

「駮 ………ブチムマ」(『類聚名義抄』:「駮」(空想上の獣)と書かれていますが、意味としては、その別形字と言われる「駁」(馬色不純)でしょう)。

「BUCHI, ブチ, 駁, n.  Piebald(まだら). ― uma, a piebald horse(まだら馬)」(『和英語林集成』)。