◎「ばった(飛蝗)」
「はばはた(葉羽はた)」。語頭の「は」は無音化し次の「ば」は無音化しつつ連音により促音化した。「は(葉)」は草の葉であり、それが緑色であり、草の葉を思わせることによる。「は(羽)」は羽(はね)。「はた」は平面状のものの翻(ひるがへ)りを表現する擬態→「はた(旗)」(10月4日)・「ちょう(蝶)」(2024年8月27日)の項。これは昆虫の名であり、「はた」はその飛翔のさいの羽根の動態を表現する擬態。この昆虫は別名「ばたばた」と言う。つまり、「はばはた(葉羽はた)→ばった」は、草の葉のような羽をはためかせるもの、ということであり、ある種の昆虫の総称。名の主体はショウリョウバッタでしょう。これは、とくにメスは、体も大きい。
「螇蚸 バタバタ バツタ」(『書言字考節用集』「気形門」)。
◎「ばっちい」(形)
「ばばちい」の促音化。「ばばちい」は「ばばちりひり(糞散り放り)」。「り」以下は音が退行化している。「ばば(糞)」は腸系排泄物を意味する俗語であり(その項)、「ひり(放り)」はそれを排泄することを意味する(その項)。「ばばちりひり(糞散り放り)→ばばちい・ばっちい」は、排泄物を放(ひ)り散らかしているようだ、ということであり、汚らしい、や、汚らしいもの、という意味になる。
「ヲヤヲヤ憎い毛虫だねへ。ヲゝヲゝばばつちい。エゝきたな」(『浮世風呂』)。
「ヲゝ穢(きた)なや穢(きた)なや。コレ兄(にい)さんはの、わんわんのばばつちを踏(ふま)うとしたよ。坊はおとつさんにおんぶだから能(い)いの」(『浮世風呂』:幼い子に言っている)。