◎「はし(端)」

「はしゐ(端為居)」。「は(端)」を為(し)ている存在のあり方、ということですが、なにかの末端域動態にあるもの・こと。「はじ」とも言う。「切(き)れ端(はし)」といった語もある。「はしくれ(端塊)」は中心に位置しない、末端域の塊(かたまり)であり、意味として粗末などうでもいいもの、を意味する。

「…いとのきて 短き物を 端(はし)切ると いへるがごとく (しもと)取る 里長(さとをさ)が声は…」(万892:「しもと(楚)」は細枝ですが、鞭(むち)にもなる)。

「新田山(にひたやま) 嶺(ね)にはつかなな 我(わ)に寄そり はし(波之)なる子らし あやに愛しも」(万3408)。

「…橘の 玉にあへ貫(ぬ)き かづらきて 遊ばむはしも(波之母) 大夫(ますらを)を 伴なへ立てて…」(万4189:この「はし」は時空の一端。その折)。

「時ごとに いやめづらしく 八千種(やちくさ)に 草木花咲き 鳴く鳥の 声もかはらふ 耳に聞き 目に見るごとに うち嘆き 萎(しな)えうらぶれ 偲(しの)ひつつ あらそふはしに 許能久礼罷 四月(うづき)し立てば…」(万4166:動詞連体形+はしに~、は、なにごとかがあってすぐそのまま、のような意。「許能久礼罷」(西本願寺本)は縦書き「許能久礼四能」がこのように誤読され書かれたのでしょう。読みは、木(こ)の眩(くれ)世(よ)の。葉が茂り、木漏れ日に目の眩(くら)む世(よ)の(そんな世界になる)、四月…、ということ)。

 

◎「はし(嘴)」

「はしいひ(箸言ひ)」。箸(はし)が口をきくような印象のもの、の意。鳥の口部にある角質で覆われた器官。「くちばし(口嘴)」とも言う。

「觜 ………和名久知波之 鳥啄也」(『和名類聚鈔』)。

「さる折しも、白き鳥の嘴(はし)と脚と赤き、鴫(しぎ)の大きさなる、水のうへに遊びつつ魚(いを)をくふ」(『伊勢物語』)。