◎「はさせ(馳させ)」(動詞)

「はせ(馳せ)」の他動表現。馳(は)せの状態にすること。「はしらせ(走らせ)」に意味は酷似する。「はせ(馳せ)」(その項)は他動表現も自動表現もある。「はささけ」という表現もある。これは「はさせあけ(馳せ明け)」。完全に馳せた状態にすること。この「はささけ」は『万葉集』のある歌にある表現ですが、一般性はないでしょう。

「さざれ石に駒(こま)を馳(は)させて(波佐世弖)心痛み我が思ふ妹が家のあたりかも」(万3542)。

「広橋を馬越しがねて心のみ妹がり遣りて我はここにして 或本歌發句曰 乎波夜之尓(をはやしに:小林に) 古麻乎波左佐氣(こまをはささけ:駒をはささけ) 」(万3538)。

 

◎「はざま(狭間)」

「はさみま(挟み間)」。何かに挟(はさ)まれているような間(ま:独立空間)。「山のはざま」。古くは清音。

「あをによし 奈良のはさまに(婆娑麻儞) ししじもの(獣のように) 水漬(みづ)く辺籠(へごも)り…」(『日本書紀』歌謡95)。

「むかし、をとこ、後涼殿のはさまを渡りければ…」(『伊勢物語』)。

「見れば三十余ばかりなる僧の、細やかなる目をも人に見合はせず、眠り目にて時々阿弥陀仏を申す。そのはざまは唇ばかりはたらくは念仏なめりと見ゆ」(『宇治拾遺物語』「空入水したる僧事」)。