◎「はこ(箱)」
「はきを(帯き緒)」。緒(を:紐(ひも)を帯(は)かせるもの、の意。最も一般的には四角い、縁(ふち)のある容器ですが、蓋(ふた)がつき、緒(を:紐(ひも)が装着され、内部を閉ざすようにこれを結ぶことが出来、中を見てはならない意思表示をすることが出来る容器。さらには、社会的に緒(を:紐(ひも)があり、結び閉ざされ、中を見てはならない意思表示をともなっている容器。のちには、木や紙その他でつくられた蓋のある容器は一般にすべて「はこ」になり、通常、それはなにかをそこに収める用途でつくられている。
「玉くしげ 少し開くに 白雲の 箱より出でて…」(万1740:これは、いわゆる浦島太郎の「玉手箱」)。
「白玉(しらたま)千箱(ちはこ)ありとも、何(なに)ぞ能(よ)く冷(こい)を救(すく)はむ」(『日本書紀』:真珠が千箱あったとしても、どうして凍(こご)えから救われるだろう)。
「箱の蓋なる御果物(くだもの)の中に、橘のあるを、まさぐりて…」(『源氏物語』)。
「箱 ……箱…篋…筥…筐…篚…皆波古」(『和名類聚鈔』)。
◎「はこ(葉木)」
「は(葉)」は、木の葉ですが、時間を意味する(→「はは(母)」の項)。「ころ(自)」はそれ自体がそれ自体の生体として存在に自足していること、を言う(→「ころ(自)」の項・2022年5月6日)。「はころ(葉自)→はこ」、すなわち、時間が時間の生体として存在に自足している、とはどういうことかというと、時間が自(おの)ずからあること、自(おの)ずからある時間、時(とき)・時間世界が自分との関係でのみあること、そんな世界、ということであり、これは「自然」「自然世界」という意味なのです。自然世界は自己にのみ依存し他に依存しない。この語は『日本書紀』にある神名の一部にあり、世界の始まりに淡いがたしかな光があり、「とこたち(常立)」となり、地(つち)が固定し、そこに生命が(植物や動物が)生まれたような世界の神の名として現れている。
「…國常立尊(くにのとこたちのみこと)と號(まをす)。………次(つぎ)に………次(つぎ)に豐國主尊(とよくにぬしのみこと)……………亦(また)は葉木國野尊(はこくにののみこと)と曰(まを)す、亦(また)は見野尊(みののみこと)と曰(まを)す」「次(つぎ)に國狹槌尊(くにのさつちのみこと)。葉木國、此(これ)をば播舉矩爾(はこくに)と云(い)ふ」(『日本書紀』)。