◎「はげ(剥げ)」(動詞)

「はぎ(剥ぎ)」の自動表現。自動的に「はぎ(剥ぎ)」が行われた状態になること。他動表現「剥ぎ」では言われないが、自動表現では髪が相当範囲や程度で抜けた状態になることも「はげ(禿げ)」という。他動表現「はがし(剥し)」。その自動表現「はがれ(剥がれ)」。

「一切の身分悉皆巻縮すること猶瘡の皰(うれ)るかさの潰(ハゲ)テ膿血流出して其瘡の巻縮するが如し」(『法華経玄賛』)。

「年七十余ばかりなる翁の、髪もはげて白きとてもおろおろある頭に…」(『宇治拾遺物語』)。

 

◎「はげ(矧げ)」(動詞)

「はがけ(は掛け)」。音(オン)が略され「はげ」。弓の握りと弦(つる)の矢筈(やはず:矢の、弦(つる)にかける部分)の域を「は」という(下記※)。これは「端」であり、独立した部分空域ということでしょう。この「は」に矢(や)をかけることが「はがけ(は掛け)→はげ」。それにより矢はいつでも発射できる状態になる。つまり、「はげ(矧げ)」は、弓に矢をつがえ、いつでも発射できるよう発射準備をすること。漢字では慣用的に「はぎ(矧ぎ)」(8月15日)も「はげ(矧げ)」もどちらも「矧」と書きますが、「はぎ(矧ぎ)」は矢を作ることであり、「はげ(矧げ)」は矢を弓につがえること。

「或張弓 揣箭(箭ヲハゲ)。置諸方所」(『蘇悉地羯羅經』卷下(承保元(1074)年点):「揣(スイ)」は、はかる、や、定める、の意)。

「或はせる(ゆるんだ)弓に矢をはげて射んとすれども不被射(射られず)」(『太平記』)。

「みかと(帝)みつから(自ら)弓に矢をはげこれを射んとし給ふに」(「仮名草子」『浮世物語』)。

※ 「弓のはふとい、はゝたかひと云ハ、弓とつるとのあひのひろき也。又ははほそい、はひくいと云は、弓とつるとのあいのせはき事也。此時はふといといはゝ、はほそひといゝてよし。はたかいといふ時は、はひくいといふ也」(『小笠原弓道宗賢記』:後半で言っていることは、相手の、太い・細い、高い・低い、という言い方にあわせればそれでよいということ)。