◎「はけ(着け・佩け)」(動詞)
「はき(履き・佩き)」の他動表現。何かに対し何かを感覚的に付き現れる(設置・装着する)状態にすること。自分に行うのではなく、他者を「はき(履き・佩き)」の状態にする。弓の弦に関しては弓が他者の位置にあり、弓に弦を装着する。つまり「弦をはき」(弓が行為者の体の一部であるかのような表現になっている)も「弦をはけ」(弓が客観的な対象になっている)も同じことをしていることになる。
「…一(ひと)つ松(まつ) 人(ひと)にありせば 大刀(たち)佩(は)けましを(波気麻斯袁)…」(『古事記』歌謡)。
「…牛(うし)にこそ 鼻縄(はななは)はくれ(波久例)…」(万3886:「はくれ」は「はけ(着け)」の已然形:牛の鼻に鼻縄を装着している)。
「梓弓(あずさゆみ)弦緒(つらを)取りはけ(波氣)引く人は後の心を知る人ぞ引く」(万99:これは弓に弦をかけている)。
◎「はけ」(動詞)
「はき(掃き)」の客観的対象による自動表現。障(さは)りになる何か、異物感や障害感のある何か、がなくなること。とくに、商品が滞留せず流通し売れることを言う。
「『…江戸は繁花の地だ。江戸でなくては荷のはける所がねへから…』」(「滑稽本」『浮世床』)。
「在庫がはけ」。
「水はけがいい」。