「はけ(歯毛)」。歯型(はがた)の毛(け)、ということですが、どういうことかというと、ある種の動物の毛を長さを揃え、ある量並べたとする。それをまとめ、一端を円形にまとめ柄をつけた場合、筆になる。これを、円形ではなく、ある程度の幅、ある程度の長さの直線状にまとめ、一端を固定する。それの形体印象が(とりわけ、液体状のものに濡れ先端が刃状になったとき)歯に似ており、それは毛でできている、ということです。それが「はけ(歯毛)」。それにより、液体状やある程度の粘性のある液体を何かに塗る。古代においてもっともその必要があったのは漆(うるし)のようです。それには柄もつけられたでしょう。漆が肌に触れることは有害。漆以外であったとしても、柄がなければ手が汚れる。

「司馬并堀(掘)土引小車及六呂柒(漆)工波気拭料」(『正倉院文書』「造石山院所用度帳」(天平宝字六年):『大日本古文書 巻之十六(追加十)  天平寶字六年』では274頁)。

「䰍筆 …………波介 以漆塗物也」(『和名類聚鈔』:「䰍(キュウ)」は『説文』に「桼也」とされる字。「桼(シツ)」は「漆(うるし)」と同字と言っていい)。

「刷子 ハケ 或作手業 ハケ 髪筆 ハケ」(『雑字類書』)。