◎「はぐり(1)」(動詞)
「はぎくり(剥ぎ繰り)」。何かを剥(は)いで手前へ手繰り寄せるような動作をすること。「股をはぐり」は、(自分で自分の)股の部分の着物を剥(は)いで手前へ手繰り寄せるような動作をする(結果的に股は露出する)。「布団をはぐり」といった表現もある。本の頁を回転させるような動態で返すこと、めくること、も言う。つまり「まくる」や「めくる」に意味は似ている。自動表現「はぐれ」もある。
「股をはぐりてこれへこれへといへば」(「仮名草子」『名女情比(めいぢよなさけくらべ)』)。
「哲学ばかりじゃない、文学もこのとおりだろうと考えながら、ページをはぐると、まだある。「ヘーゲルの……」」(『三四郎』(夏目漱石))。
◎「はぐり(2)」(動詞)
「はかくるひ(努果狂ひ)」。「はか(努果)」は努力の成果ですが、これが狂(くる)ふとは、努力においてめざし期待した結果にならないこと。努力が成果をあげず、失敗すること。どう努力したらよいかわからなくなること。一般に動詞に付いてもちいられ、その動態の成果が得られない状態になってしまうことを表現する。たとえば「見はぐり」は、見ることの成果が得られない。この語は活用が「はぐれ」に、下二段活用に、なり、かならずしも動詞につかず、期待される成果が得られないこと一般も表現するようになる。
「心中が出てで結納うりはぐり」(「雑俳」『柳多留』:出るで、とも読まれる)。
「これはみなつられはぐりしやからなり(これは皆釣られはぐりし輩なり)」(「黄表紙」『即席耳学問』)。
「此の間の深川の火事で娘を見はぐり、行方が知れませんから」(「落語」『塩原多助一代記』)。
「バスが遅れて7時の電車に乗りはぐった」(はぐりたり→はぐった)。