◎「はぎ(剥ぎ)」(動詞)

「ははき(端掃き)」。「は(端)」「はき(掃き)」はその項参照。表面域部を除去すること。語尾の濁音は持続感を表現する。自動表現は「はげ(剥げ)」。(人から)「はがし」(つまり、とりあげ)、という意味の他動表現「はげ」もある。

「…和邇(わに:鮫)、我(あ)を捕(とら)へて悉(ことごと)に我(あ)が衣服(きもの)を剥(は)ぎき」(『古事記』)。

「…あしひきの この片山の もむ楡(にれ)を(毛武爾禮乎) 五百枝剥(は)き垂(は)り(五百枝波伎垂)…」(万3886:これは古代において「楡木(にらぎ)」と呼ばれた漬物を言っているらしい。楡(にれ)の皮を剥ぎ、干し、搗き、粉末をとり、これで蟹その他を漬ける。この万3886は蟹の身になった歌であり、蟹が漬物にされる)。

「狩で得た獣の皮を剥ぎ」。

 

◎「はぎ(矧ぎ)」(動詞)

篠(しの)のような、ある程度の長さの、細くまっすぐな棒があったとする。それに鳥の羽(はね)をつけたそれが「はぎ(羽着)」。それが動詞化し、「はぎ」は、そうしたものに羽をつけること、すなわち矢をつくること、を意味する。まっすぐな棒があったとする。その末端を尖らせたり、末端に尖ったなにかを装着してもそれは「や(矢)」ではない。それが弦で弾いて飛ぶ重さ、長さ、太さであり、それに飛ぶ方向を定める羽が装着され「や(矢)」になる。その棒の末端が尖っていなくてもそれは「や(矢)」になる。つまり、羽を装着することは矢(や)をつくることとおなじ意味にもなる。

「近江(あふみ)のや八橋(やばせ)の小竹(しの)を矢(や)はがずて(不造矢而)まことありえむや恋しきものを」(万1350)。

「鷲(わし)の本白(もとじろ)をくわうたいくわう(皇大宮)の箆(の)に矧(は)ぎて…(『梁塵秘抄』:「鷲(わし)の本白(もとじろ)」は、鷲(わし)の羽根で、根元あたりが白いもの。「箆(の)」は矢の細い棒の部分)。

「作 ハグ ツクル 作矢」(『雑字類書』)。