◎「はき(掃き)」(動詞)
H音の感覚感とA音の動的開放感・解放感により異物や障(さ)はり・障害物を除去し解放を生じさせることを表現する。「部屋をはき」は、部屋から異物や障害物が除かれている。ここでは「は」は人の動態として表現されているわけですが、この「は」はそれが情況動態を表現するR音が活用語尾になった場合「はり(墾り)」になる。「はれ(晴れ)」の「は」もそれ。つまり、「はき(掃き)」は「はれ(晴れ)」の状態にすること。「はれ(晴れ)」も参照。
「櫛(くし)も見じ屋内(やぬち)も掃(は)かじ(波可自)草枕旅行く君を斎(いは)ふと思ひて」(万4263)。
「…ちはやぶる 神を言向(ことむ)け まつろはぬ 人をも和(やは)し 掃(は)き清(きよ)め(波吉伎欲米)…」(万4465)。
「拭 …ノゴフ…ハク」(『類聚名義抄』)。
◎「はき(吐き)」(動詞)
この「は」は、喉(のど)が開かれた呼気(肺から放出される気)流動の擬音。つまり、「はき(吐き)」はその動態になること。「息をはく」。ただし、人間は、気を体内に取り入れたり放出したりをそのつど自覚しておこなっているわけでもなく、「はく」と特別に自覚される動態はそれなりに特別な強さや激しさであったり、特別な類型のことであったりする。「唾(つば)をはく」。「嘔吐物(げろ)をはく」。ある程度の激しさをもって(出し放つように)意思表明をおこなったり言語活動をおこなうことも表現する。「本音をはく」。「弁舌をはく」。比喩的に「煙をはく」などという表現もある。
「あかつき(暁)にかへりて心地あしけ(悪し気)にてつはき(唾)をはき(吐き)ふしたり(臥したり)」(『古本説話集』)。
「吐 …ハク」(『類聚名義抄』)。
「唾血 ……知波久」(『和名類聚鈔』:隣の項の「嘔吐」には「倍止都久(へどつく)」や「太萬比(たまひ)」とある)。