◎「はかま(袴)」
「はきくらま(履き鞍馬)」。「はっくらま」のような音(オン)を経、「はかま」になった。履くと鞍のついた馬になるもの、の意。股の割れた下半身衣類ですが、褌(ふんどし)状のものもあった。それを身につけることにより、乗馬の際、たとえそれが裸馬でも、馬体に触れる臀部が保護され、それが鞍をつけた馬の状態になる(足を覆うものであれば、足や服も保護される)。要するに、原意は乗馬用の衣類ですが、後には一般的な活動着・仕事着にもなり、儀礼的な、公式な、下半身衣類の名にもなる。その一般的な形体様式は、足を覆う部分が両足に分かれた下半身衣類。
「臣(やつこ)聞(うけたまは)る。産腹(はら)み易(やす)き者(ひと)は、褌(はかま)を以(も)て體(み)に觸(かから)ふに、卽便(すなは)ち懷脤(はら)みぬと」(『日本書紀』:「褌(コン)」は「ふんどし」「たふさき」と読まれる字。仕事着にもなるではあろうけれど、ここでは下半身下着。それが「はかま」と呼ばれている)。
「袴 ………和名八賀万 脛上衣名也」(『和名類聚鈔』:「袴(漢音・コ)」は『説文』に「脛衣也」と書かれる字であり、この『和名類聚鈔』の「脛上衣名也」はそれを言っている。「脛衣」は日本では「はばき」とも読まれ、足の脛(はぎ)部分に巻く、一種の衣類(いわゆる、ゲートル)ですが、「袴」は中国の他の書に「今所謂套袴也。左右各一,分衣兩脛」や「兩股各跨別也」とも書かれる字。ようするに、中国語では、「袴(コ)」は古い中国服の下半身着衣であり、後世で言う「ズボン」(「褲」とも書く)。日本では後世では、両脚が分かれている形式の下半身衣類が一般に「はかま」になる)。
◎「はからひ(計らひ)」(動詞)
「はかりはひ(計り這ひ)」。「はかり(計り・推り…)」「はひ(這ひ・延ひ)」はその項。「はかり」の情況・一般的な「はかり」の動態情況、になること。「はかり」が「はふ」、とは、「はかり」が情況化することであり、「はかり」が時空として環境化する。常態になる。「はかる」という動態が、個別的動態が完了するのではなく、それが持続的な常態になる。たとえば、AがBの事態を考慮し、配慮し、「はかり」、Bを特別な待遇におかれる常態にした場合、Bはその特別な配慮の「はからひ」たる待遇にある状態になる。「はかり」の主体が複数である場合も「はからひ」になることがある。
「是(ここ)に、更(さら)に諸(もろもろ)の将軍(いくさのきみ)を留(とど)めて、議(はから)ひたまふ」(『日本書紀』:これは「はかり」の主体が複数)。
「衆僧聞きて、商量(はか)らひて言はく…」(『日本霊異記』:これも「はかり」の主体が複数)。
「この月のほどにと契りきこえさせたまふことはべるを(今月中にとお約束をいただきまして)、日をはからひていつしかと思すほどに…」(『源氏物語』:いつがよいか、良き日を考える状態で日々すごしている)。
「御迎への人びとも騒がしければ、心も空なれど、人まをはからひて…」(『源氏物語』:人間(ひとま:人のいないとき)に、複数の周囲に人のいない状態に(歌をつくり文(ふみ)をおくった))。
「おほよそ初心の情量は仏道をはからうことあたはず。測量すといへども、あたらざるなり」(『正法眼蔵谿聲山色』)。