◎「のろし(鈍し)」(形ク)

「のろ」は「ぬる(鈍・温)」(→「ぬるし(鈍し・温し)」の項・5月16日)の母音変化。「ぬる(鈍・温)」がO音化・対象化し対象動態を表現する。「ぬる(鈍・温)」の動態とは、動態力が弛緩している。反応も遅い。

「や、梶原殿、宇治河は上はのろくてそこはやし…」(『平家物語』(延慶本))。

「『…てめへなんぞはかうべ(頭)がのろいぜ』」(『西洋道中膝栗毛』)。

 

◎「のろのろ」

「ぬる」(温)の母音変化。「ろ」に関しては「うろうろ」の項。「ろ」により表現される客観的に存在化した動態に基本的な緩みがあることが表現される。緊張感・緊迫感がない。速度は遅い。

「水のしづかに ながるるを のろのろといへる のろ」(『名語記』)。