「のりハウシン(告り報芯)」。告(の)りを報(ハウ)じる・知らせる、「シン(芯)」ということであり、「シン(芯)」は、原意は中心ということなのですが、ここでは蝋燭(ラフソク)や行燈(あんどん)などの火を点(つ)ける糸を意味する。つまり「のりハウシン(告り報芯)→のろし」は、告(の)りを、何らかの情報内容を、四方八方に告げ知らせる火の点火点であり、その火。その火やあがる煙により遠方になにごとかが知らされる。同じ工夫は古代からあるのですが、「のろし」という語は鎌倉時代(1192年~(下記※))以降くらいからです。ふるくはこれは「とぶひ(烽)」と言った。情報が四方八方へ飛ぶ火、ということです。言っていることは「のろし」に同じ。
「十六日山科ヨリ将軍塚マテ足軽カケマタノロシ上ケ候」(『群書類従』による『祇園執行日記』(天文元(1532)年八月十六日))。
「是によて。山々みねみねに。薪(たきぎ)をつみをき。貝鐘(かいかね)をつるし人守(まも)り居ゐて。敵の舟来るを見付、火をたて貝鐘(かいかね)をならせば山みねに火を立つゞけ。即時に三崎へ聞へ、舟を乗いだす。是を夜はかゞりと名付、昼はのろしといふ。此三国にかぎらず。関東諸国にもあり。兼日(けんじつ:ひごろから)燧(のろし)所をさだめをき万(よろづ)の約束にも相図(あひづ)に立る事あり…」(『北条五代記』)。
「狼烟 ノロシ 狼燧 同 狼糞 同 烽火 同」(『運歩色葉集』:「のろし」が「狼糞」とも書かれるのは中国では同じようなことをする際に狼の糞を焼いたからだそうです。そうすると煙が真っ直ぐ立ち昇るというのですが、狼の糞にそのような効果があるとも思われない。狼は遠吠えで遠方になにかを知らせるのでその縁でということか)。
※ 2025年現在、文部科学省検定教科書においても鎌倉時代の始まりは1185年とされていますが、それはそういう学説があるということであり、学説により幕府が起こったり終わったりということは起こりませんし、歴史的にも起こっていない。源頼朝が征夷大将軍に任ぜられたのは1192年です。これは歴史資料による物理的な時空認定によるもの。