「なほび(直(尚)び)」。「び」は「都び」その他のそれ。その項参照。「なほ(直・尚)」もその項参照(2月4日)。全体の意は、その変動として何の異動もない変動が思われること。何も変わらずそのまま持続する延続的な動態情況になること。「背丈がのび」「時間がのび」。物体の、全体膨張ではなく、線状進行延長、その多方向化たる面状拡張、も表現される。ただ、その多方向性が常に均一である場合は「ひろがり(広がり)」になるでしょう。ものごとなら、たとえば「成績がのびる」。心情なら「のびのびする」。「草がのぴ」や「背がのび」は成長も表現するが、たとえば「ゴムがのび」でのびたままになることは構成力が弛緩した印象にもなり。人がそうなることは活動力が喪失した状態になることも表現する。「ウドンがのび」なども構成力の衰弱。この「のび(伸び)」は、原意としては、生体の成長や時間的推移に関して言われたものでしょう。「のびのび」「のびやか」「のびらか」といった表現もある。上二段活用。

「『おほかた、例の、(薫を)見たてまつるに皺のぶる心地して、めでたくあはれに見まほしき御容貌ありさまを…』」(『源氏物語』:皺(しわ)がのびる)。

「日やうやうさし上がりて、ほのかに(源氏を)見たてまつるより、(入道は)老忘れ、齢(よはひ)延ぶる心地して、笑みさかえて…」(『源氏物語』:命(寿命)がのびる)。

「かくて、山の帝(みかど:朱雀院)の御賀も延びて、秋とありしを…………………姫宮いたく悩みたまへば、また延びぬ」(『源氏物語』:計画が延期される)。

「弥生の十日のほどなれば、空もうららかにて、人の心ものび…」(『源氏物語』)。

「円満院大輔源覚は 「今は宮も遥かに延ばさせ給ひぬらん」とや思ひけん、大太刀大長刀左右に持つて敵の中を割つて出で…」(『平家物語』:宮が延びた、とは、生存・存在がのびた、逃げのびた)。