◎「のさき(荷前)」
「にのさき(荷の幸)」。「に」の脱落。荷のような幸(さき)。負担になるほどの大きな幸(さきはひ)。神宮や陵その他に奉った各地からの供物。供物を受けるものにおいて荷なのではない。それを運ぶものにおいて荷だということ。
「東人(あづまびと)の荷前(のさき:荷向)の箱の荷の緒にも妹は心に乗りにけるかも」(万100:私は神への供物たる重い恋の荷を負い、引いている。その荷を私に引かせているのはその荷に繋がれた緒たるあなたです、ということでしょう)。
「荷前 ノサキ」(『色葉字類抄』)。
◎「のさばり」(動詞)
「のしあみはり(伸し網張り)」。伸(の)ばして網(あみ)を張(は)る、ということですが、周囲に網(あみ)を張(は)りそこに居る人々を網に捕えるように不自由にすることで自由になること。
「きせるくはへて懐手、身をのさばつて立ち居たり」(「浄瑠璃」『百合若大臣野守鏡』)。
「…といひて、(男は)かうし(格子)のうちにをれば、れいの此の格子の外には人の見るをも知らでのさばれば、此の女おもひわびて揚屋へゆく」(「仮名草子」『仁勢物語』)。