◎「のこぎり(鋸)」
「なほきり(直切り)」。なほきり→のほきり。「なほ(直)」は、その影響下の状態で、そのまま、持続的に、という意味になり(→「なほ(直・尚)」の項)、「なほきり(直切り)→のこぎり」は、連続的に(そして真っすぐ)切るもの、の意。古くは「のこぎり(鋸)」は「のほきり」と言ひ、子音H音がK音へと変化した。大工が用いる工具の一種の名。
「鋸……和名能保岐利」(『和名類聚鈔』)。
「鋸 ……ノコ(ホ)ギリ」(『類聚名義抄』:「コ」の横に「ホ」とも書かれる)。
「鋸……削刀也割也 乃保支利」(『新撰字鏡』)。
「御宮けにはのこきりあまた」(『御湯殿上日記』)。
◎「のごひ(拭ひ)」(動詞)
「のけおひ(退け覆ひ)」。何かをそこから遊離させるために覆ふこと。なにかたるそれはそこから取り去られる。意味は「ぬぐひ(拭ひ)」に似ている。
「…ま幸(さき)くて 早帰り来(こ)と (母や妻らは)真袖(まそで)もち 涙を拭(のご)ひ(能其比) むせひつつ…」(万4398:大伴家持による防人の歌)。
「拭 ノコフ」(『色葉字類抄』)。