「ねめひた(睨め直)」。E音I音の連音がU音になっている。「ねぷた」とも言う。「ねめ(睨め)」は煮えたぎるような思いで見ることであり(その項)、「ひた(直)」は動態が全的であること(「ひた向き」や「ひたすら」の「ひた」→「ひた(直)」の項)。これは青森における祭事の名。そこでは周囲を睨(ね)めまはすような、多くは武者の、描かれ形作られた大きな山車(だし)が町を練り歩く。この武者の様(さま)が「ねめひた(睨め直)」。なにかを睨(にら)みつけている。その特徴による名。睨(にら)みつけることにより悪霊・邪霊を退散させるということ。祭事自体は、お盆の精霊送りや夏の虫送りのように古くからあるのでしょうし、のちには京都の夏の御霊会・疫病払い・邪気払い、つまり祇園祭、の影響なども受けつつ、後のような祭事になっているのでしょうけれど、「ねぶた」という語が記録に初めて現れるのは1700年代前半です。そのころには名称も一般化し、その特徴的な山車もその少し前に生まれているものなのでしょう。
「六日 四半過 織座江(紺屋町の織座へ) (藩主・津軽信寿(のぶひさ)が)被為成候(おでましになった) 御供廻り 例之通於同所 祢ふた 高覧 被遊候 祢むた 罷出候」(『弘前藩庁御国日記』享保七(1722)年七月六日:「祢(ね)ふた」「祢(ね)むた」と書かれている。「ねふた」は濁点は書かれていませんが「ねぶた」でしょう)。