◎「ねざし(根差し)」(動詞)

「さし」は発生する意の自動表現(「春のきざし(兆し・来射し)」などのそれ)→「さし(射し・差し(挿し・刺し・注し・障し・止し・鎖し)・指し)」の項(2022年6月25日)。「ねざし」は、植物の根が生えることなどを意味しますが、ことが表現され、あることが何かに根(ね:原因)を発していることも意味する。

「…岩に生ひたる松の根ざしも、心ばへあるさまなり」(『源氏物語』)。

「滝つ瀬に ねさしとどめぬ うきくさの うきたる恋も 我れはするかな」(『古今和歌集』)。

「鹿の皮を被(かぶ)り忍び入らんとせしは、根ざしたる所存あるよな。眞直(まつすぐ)に白状々々」(「浄瑠璃」『曽我会稽山』)。

「なまなまの上達部(かむだちめ)よりも非参議の四位どもの、世のおぼえ口惜しからず、もとの根ざし賤(いや)しからぬが、やすらかに身をもてなし、ふるまひたる、いとかはらかなりや」(『源氏物語』:この「ねざし」は、いわゆる、出自(どういう家柄や血族関係の出身か)、ということ)。

「此六よく(欲)に六しゆ(種)の根ざし有」(「仮名草子」『竹斎』)。

 

◎「ねずみ(鼠)」

「ねすみみ(寝済み見)」。「すみ(済み)」は、ことの・完成・終わり、のような意ですが(→「すみ(澄み・済み)」の項・2023年5月15日)、「ねすみ(寝済み)」すなわち、寝(ね)が済んだ、とは、全的に寝ることが完成した→みんな寝た、ということであり、それを見ているもの、それを見て動きだすもの、が「ねすみみ(寝済み見)→ねずみ」。哺乳動物の一種の名。ほとんどが夜行性。

「…於是(ここに)、出(いで)む所(ところ)を知(し)らざる間(あひだ)に、鼠(ねずみ)來(き)て云(い)ひけらく」(『古事記』)。

「鼠 ………和名禰須美 穴居小獣種類多者也」(『和名類聚鈔』)。