◎「ぬかご(零余子)」

「にゆかご(荷ゆ籠)」。「ゆ」は経験経過を表現する助詞→「ゆ(助)」の項。この場合は客観的対象の相互的経験経過、比較、を表現する。25世紀風に表現すれば、「荷(に)より籠(かご)」ということ。これは植物の腋芽・珠芽であり、とくに、ヤマノイモのそれを言う。食用になるのですが、小さな粒であり、さほど多量になるものでもなく、山で採取しても籠に少しという状態になり、荷より籠(かご)の方が重く存在感がある、という状態になる。そういうものだ、という表現が「にゆかご(荷ゆ籠)→ぬかご」。「むかご」とも言う。これは「みゆかご(実ゆ籠)」。命名意図は同じ。

「零餘子 ……和名沼加子 署預子也」(『和名類聚鈔』)。

「…またぬかごをもり、芹をつむ」(『方丈記』)。

「汁鍋にゆさぶり落すぬか子哉」(「俳諧」『文政句帖うつし』)。

 

◎「ぬかし」(動詞)

「ぬけ(抜け)」の使役型他動表現。抜けることをさせる。誰、あるいはなに、に対する使役かといえば、たとえば自己たる身体の一部→「腰をぬかす」(腰がなくなってしまったような状態になる)。人を環境から脱出させることも言う→「権三様をもあの婆が、見ぬ様にそつと抜かして往なせませ。夜に入り人も静まつて必ずお出で」(「浄瑠璃」『鑓の権三重帷子』)。ことを抜けさせることも言う→「三行ぬかして読む」。人も抜けさせる→「かけっこして二人ぬかした」。ものを環境から脱出させ自分のものにしてしまうことも言う→「ゑい道具をみなぬかして。おまへとふたり夜舟で。ほいとこさやるは」(「洒落本」『色深狭睡夢』)。理性的に管理されていない言語を解き放つままにする、というような意味でも言う→「『まだりくつをぬかすか』」(「狂言」『目近籠骨(めちかこめぼね)』)。「なにをぬかしやがる」。