◎「にしき(錦)」
「にしき(瓊敷き)」。「に(瓊)」は「ぬ(瓊)」の美称。「ぬ(瓊)」は玉(ギョク)を意味する。彩(いろどり)もあり艶(つや)もあり美しい石です(→「ぬ(瓊)」の項)。「にしき」は、その彩(いろどり)あざやかで艶(つや)やかな玉(ギョク)を敷き詰めたようであること・もの。これは織物の一種を言い、それは金糸銀糸など色鮮やかな糸が用いられさまざまな模様が織りなされている。
「ささらがた 錦(にしき:邇之枳)の紐(ひも)を 解(と)き放(さ)けて 數(あまた)は寝(ね)ずに 唯(ただ)一夜(ひとよ)のみ」(『日本書紀』)。
「…錦綾(にしきあや)の 中につつ𮖐(つつめ)る 齊(いは)ひ兒(ご)も…」(万1807)。
「錦 ………和名邇之岐」(『和名類聚鈔』)。
「みわたせは柳桜をこきませて宮こそ春の錦なりける」(『古今和歌集』)。
◎「にじ(虹)」
「にひうつし(瓊日映し)」。「に(瓊)」は玉(ギョク)の美称(その項)。様々な色彩の玉(ギョク)の日の反映、の意。「ぬじ」とも言う。古代東国の語に「のじ」もある。「のじ」は「ぬおほうつし(瓊大映し)」か。
「此(こ)の沼(ぬま)の邊(ほとり)に、一(ある)賤(いや)しき女(をみな)晝寢(ひるね)しき。於(ここ)に日(ひ)の虹(にし)の如(ごと)く耀(かかや)きて…」(『古事記』)。
「虹 …………和名爾之」(『和名類聚鈔』)。
「五つの色の雲あり。霓(にじ)の如く北に渡れり」(『日本霊異記』)。
「丙寅(ひのえとらのひ:朔(ついたちのひ)が壬戌(みづのえいぬ)になっているので、五日)、法令(のりのふみ)造(つく)る殿(みあらか)の內(うち)に有大(おほ)きなる虹(ぬじ)有(あ)り」(『日本書紀』)。