◎「にごり(濁り)」(動詞)
「にげをゆり(似気を許り)」。似(に)た気(け)を許(ゆる)すこと。「似(に)た気(け)」とは、似ているがそれではない気(け)が感じられるものです。「ゆり(許り)」や「け(気)」はその項参照。似ているがそれではない気(け)が感じられるものを許さないことによって維持されるそれは純粋であり、濁っていないわけです。
「あすか川(がは)下(した)濁(にご)れるを(尓其礼留乎)知らずして背ななと二人さ寝て悔(くや)しも」(万3544:男の下心が濁っていたわけです)。
「おほかたの世をも思ひ離れて澄み果てたりし方の心も濁りそめにしかば…」(『源氏物語』)。
「はちす葉のにこりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあさむく」(『古今和歌集』)。

◎「にごし(濁し)」(動詞)
「にごり(濁り)」の他動表現。濁る状態にすること。
「苗代(なはしろ)の 水ふみにこし けふよりは 早苗(さなへ)とるらむ かつまたのさと」(『夫木和歌抄』)。
「飛(た)つ鳥跡を濁さず」。「言葉をにごす」。