◎「に(丹)」
「にひ(似日)」。(天体としての)日(ひ)のようなもの、そのような色のもの、そのような色。赤系の(着色料たる自然物も含め)着色料を言い、赤系の色も言う。
「物部(もののふ)の 我(わ)が夫子(せこ)の 取(と)り佩(は)ける 太刀(たち)の手上(たがみ)に 丹(に)畫(か)き著(つ)け その緒(を)は 赤幟(あかはた)を載(かざ)り…」(『古事記』)。
「丹砂 ………和名邇 似朱砂而不鮮明者也」(『和名類聚鈔』)。
「口びるにはにと云ふもの塗りたるやうに」(『浜中納言物語』)。
◎「に(瓊)」
「ぬゐ(瓊日)」。「ぬ(瓊)」はその項。美しい石・玉(ギョク)を言う。「ぬひ(瓊日)」は「瓊(ぬ)」の日(ひ)、玉(ギョク)の日(ひ)、であり、瓊(ぬ)の中でも特にうつくしいもの。つまり、「に(瓊)」は「ぬ(瓊)」の美称。どちらも玉(ギョク)を意味する。「やさかに」と言ったりする。「やさか」は漢字表記で「八坂・八尺」と書かれますが、「や」は、数詞ではなく、原意としては感動発声の、「いや(彌)」にあるそれでしょう。「さか」は、はかり(計り)、のような語であり(→「さか(計量果・尺・斛)」の項・2022年5月22日)、容積も長さも重さもあらわす。つまり、「やさか」は、とても大きな、や、とても長い、といった意味になる。「やさかに」は、とても大きな美しい玉(ギョク)。
「八坂瓊之五百箇御統(やさかにのいほつみすまる)」「瑞八坂瓊之曲玉(みつのやさかにのまがたま)」(『日本書紀』)。
「上枝(かみつえ)には八握劒(やつかのつるぎ)挂(とりか)け、中枝(なかつえ)には八咫鏡(やたのかがみ)挂(とりか)け、下枝(しづえ)には八尺瓊(やさかのに)を挂(とりか)け…」(『日本書紀』)。
「八坂瓊之(ニノ)五百箇御統(イホツミスマル) ……………越後国風土記云 八坂丹玉名 謂玉色青 故云青八坂丹玉也」(『釈日本紀』第五巻)。