◎「に(荷)」
「のゐ(野居)」。野宿のためのもの(様々な道具や食料など)。一般性から離脱した(普段の生活にない)特異な負担。彼はなぜ野にいるのかといえば、それは「さち(幸)」を得るためです。「さち(幸)」は、起源的には食べ物であったとしても、他の、物であることもある。情報であることもあるでしょう。
「…ますますも 重き馬荷(うまに)に 表荷(うはに)打つと いふことのごと…」(万897)。
「年長(としなが)く日(ひ)多(まね)く此(この)座(くらゐに)坐(ませ)ば 荷(に)重(おも)く力(ちから)弱(よわく)して不堪負荷(もちあへたまはず)」(『続日本紀』宣命23)。

◎「に(土)」
「ねおひ(根覆ひ)」。「ぬひ」のような「のひ」のような音(オン)を経、「に」になっている。(植物の)根(ね)を覆(おお)うもの、の意。異なった視点で言えば、植物が育つもの。ようするに、後世で言う「つち(土)」(「つち」という語は原意では地・大地を意味する)。後世では日常的に自然物として地球表面にある水、岩石、砂以外はすべて「つち」と言っているようです。由来や成分はさまざまであり、植物が育つなどする養分の状態にかんしてもさまざまです。「に」という語も、古くから、その後世の「つち」のような用い方がなされているでしょう。
「櫟井(いちひゐ:地名)の丸邇(わに)さの土(に:邇)を 初土(はつに:波都邇)は はだ赤(あか)らけみ 底土(しはに:志波邇)は に黒(ぐろ)き故(ゆゑ)…………その中(なか)つ土(に:爾)を…」(『古事記』歌謡43:これは「に」を焼いて赤系の顔料(着色材料:この場合は化粧品)を作っている。「しはに(底土)」はその項)。