◎「なもみ・なまはげむ」
「なまよみ(生世見)」。「なま(生)」はその項。「なまよみ(生世見)→なもみ」は、世の中をいい加減に見ているもの、の意。囲炉裏などの火に常にあたっていると、脚や腕などの皮膚に異変が起こり「ひだこ(火胼胝)」と表現されるものができる。これを「なもみ」と言い、ぬくぬくと火にあたってばかりいる怠け者、不精者の象徴とされる。世の中の厳しい現実を知らず、これをいい加減に見てなめてかかり、のんびりと、ぬくぬくと、火にあたり暖かく過ごしている者、ということです。そういう者を恐ろしい形相で諌めるのが「なまよみはげ(――剥げ)→なまよんはげ→なまはげ」です(「はげ(剥げ)」にある語尾のE音は命令形。それによる、皆でそうしよう、お前もそうしろ、と呼びかけている)。「なまはげ」が刃物を持っているのはこの「なもみ」を生きながら剥ぎ取るため。これが小正月に現れるのは、いつまでも正月気分でいるな、ということでしょう。この「なまはげ」に関しては「悪い子はいねーがぁ」という台詞が良く知られていますが、この行事はけして、元来は、悪い子や親の言うことを聞かない子を脅しこらしめるためのものではなく、世の中をいい加減に見てなめてかかりのんびりぬくぬくと生活している大人を恐ろしい形相で諌めるものです。
◎「なやし(萎やし)」(動詞)
「なえ(萎え)」の他動表現。構成を弱化させること。たとえば布の構成を弱化させ、それは柔らかく肌に馴染む状態になる。布にかんしてのみ言うわけではなく、鉄をなやせば(打ち叩いて)しなやかさをもたせ、(打ち叩いて)人の抵抗力を失わせ捕縛したりもする。
「着なやしたる物の色もあらぬやうに見ゆ」(『蜻蛉日記』)。
「鍛 …ウツ キタフ……ネヤス ナヤス」(『類聚名義抄』)。