◎「なめし(無礼し)」(形ク)
「なみえし(蔑良し)」。「なみ(蔑)」にかんしては「なみし(蔑し)」の項。「えし(良し)」はその項。この場合の「えし(良し)」は、AはBを良しと思っているわけではない。そうではなく、Aは、「Bは良しとしている」と判断している。なにを良しとしているか、なにを、それでよい、としているか、といえば、「なみ(蔑)」で良しとしている。Aは、「Bは蔑(なみ)良(え)しとしている→Bは無礼(なめ)し」。それが「なみえし(蔑良し)→なめし」。「なみ(蔑)」は、無視する、存在・その価値や意味を認めない、のような意ですが(→「なみし(蔑し)」の項)、その「なみ(蔑)」でよしとする印象が現れていることが「なみえし(蔑良し)→なめし」。AがBにかんし「なみえし」としていれば、AはBに対し「なめし」であり、BはAを「なめし」と思う。「け(気)」のついた「なめげ(無礼気)」という語もある。
後世において、「なめたまねしやがって」といった用い方をする「なめ」がありますが、この形容詞の語幹がそのまま動詞化しているとは思われない。
「汝(いまし)の為(せ)むまにまに仮令(たとひ)後(のち)に帝(みかど)と立(たち)て在人(あるひと)い立(たち)の後(のち)に汝(いまし)のために不禮(ゐやなく)して不従(したがはず)なめく(奈賣久)在(あら)む人をば帝(みかど)の位(くらゐ)に置(おく)ことは不得(えざれ)、又(また)…」(『続日本紀』「宣命」)。
「文(ふみ)ことばなめき人こそいとにくけれ。世をなのめに書き流したることばのにくきこそ」(『枕草子』)。
「大和道(やまとぢ)は雲隠りたりしかれども我が振る袖をなめしと思ふな」(万966)。
「平懷 ナメシ 无節 同 疎躰 同」(『色葉字類抄』)。
◎「なめし(鞣し)」(動詞)
「なめへし(滑圧し)」。「なめ(滑)」はその項。「へし(圧し)」(その項)は対象を圧縮されたような状態にすることですが、動物の生体から取り去った毛皮から毛や脂肪を取り去り、同時にそれにより皮を柔らかくする作業が、皮を圧しつつ滑(なめ)らかに、柔らかく、する印象を生じさせた。そのような作業が「なめし」。これはそのような作業がなされ製された皮を意味する語にもなる。
「NAMESHI,―su,―ta, ナメス, 究, t.v. To tan, to dress and softn skins. Kawa wo ―, to tan leather」(『和英語林集成』)。