◎「なむぢ(汝)」
「ななむつゐ(七睦居)」。「な」は一音消えた。「なな(七)」は数詞ですが、「むつ(睦)」はともに居たいと思っていることを意味し、これに「むつ(六つ)」がかかり、「ななむつゐ(七睦居)→」は、「むつい(睦居・六居)」を一つ超えている居(ゐ:居る人)、ということ。「むつ(睦)」(ともに居たいという思い)を一つ超えている、とは、そこに相手を敬う思いが加わっているということ。この語が、親しみを覚えつつそこに敬いも加わっている二人称になる。歴史的には、この語が、相手への尊称ではないが、それを蔑(ないがし)ろにするものではなく、それへの尊重感もある二人称、といった語になっていく。
「策(おほみことのり)して曰(のたまは)く、「咨(あ)、爾(なむぢ)軽皇子(かるのみこ)」、云々(しかしかいへり)」(『日本書』:軽皇子(かるのみこ)は後の孝徳天皇。この策(おほみことのり)は皇極天皇によるもの)。
「仁 …キミ ナムヂ ヒト………ムツマジ………タフトシ」(『類聚名義抄』)。
「『なんぢがもちてはんべるかぐや姬奉れ…』」(『竹取物語』)。

◎「なめ(滑)」
「なめみいえへ(舐め身癒えへ)」。「なめ(舐め)」はその項。語尾の「へ」は目標感のある方向性のあることを表現する助詞にあるそれ。「なめみいえへ(舐め身癒えへ)→なめ」は、身が舐め身が安堵へと向かうようなこと・もの、ということ。「なめらか」という語もある。
「見れど飽かぬ吉野の川の常滑(とこなめ)の絶ゆることなくまたかへり見む」(万37:この「とこ」は、時間的に途切れない、ということ)。
「佐那(さな) 此二字以音 葛(かづら)の根を舂(つ)き、其(そ)の汁(しる)の滑(なめ)を取(と)りて、其(そ)の船(ふね)の中(なか)の簀椅(すばし)に塗(ぬ)りて…」(『古事記』)。