◎「なまり(鈍り・訛り)」(動詞)
「なま(生)」の動詞化。「なま(生)」は完成感が無い(足りない)ことを意味する(→「なま(生)」の項2月9日)。そうした情況動態になるものやことはさまざまであり、刀の切味が悪くなれば「刀がなまる」、運動技能が衰えれば「腕がなまる」、言語が完成感が無い(足りない)、崩れている、印象であれば「言葉がなまる(訛る)」。完全には干さず、途中までしか干していない印象の干し魚の状態を言う「なまりぶし(なまり節)」の「なまり」もこれ。
「三左『こりやお心がなまりましたな』 甲斐『むヽ、はヽヽヽヽ、拙者が心はなまらねど、左言ふ貴殿の御胸中。まことに以て心許なし』」(「歌舞伎」『早苗鳥(ほととぎす)伊達聞書(実録先代萩)』)。
◎「なみ(波)」
「ねやみ(嶺や見)」。「ね(嶺)」は「をね(尾嶺)」や「たかね(高嶺)」などのそれであり、空間を隔てる独立存在的経過感のあるものであり、行く手を隔てるように連なる連山です(→「ね(嶺)」の項)。「や」は疑惑を表現し、「ねやみ(嶺や見)→なみ」は、空間を隔てる独立存在的経過感のあるもの、行く手を隔てるように連なる連山、を見たような、もの、の意。これは海での印象。そのような印象で現れ消え現れる海表面の状態を言う。
「…辺(へ)つ波(なみ:那美) そに脱(ぬ)き棄(う)て…」(『古事記』歌謡5)。
「かからむとかねて知りせば越(こし)の海(うみ)の荒礒(ありそ)の波(なみ:奈美)も見せましものを」(万3959)。
「水波 ……風吹水成波文 曰漣…………和名奈三」(『和名類聚鈔』)。