◎「なまこ(海鼠)」
「なみまこ(波間蚕)」。「こ(蚕)」はその項参照(「生きた線状の長いもの」のような意)。波間(なみま)の(海の)「こ(蚕)」、の意。
「海鼠 ナマゴ」(『雑字類書』(室町時代))。
「生海鼠 ナマコ」(『伊京集』(室町時代末期))。
「海鼠 コ 以蛭大物也」(『伊呂葉字類鈔』(平安末期):この書に「ナマコ」はない)。
◎「なまけ(怠け)」(動詞)
「なま(生)」の動詞化。「なま(生)」にかんしてはその項(2月9日)。ものやことが、そのものやこととしてあるとは明瞭に判断できない状態であること(自動表現)。あるいは、ことをそのようにすること(他動表現)。活用語尾が「け」になることにかんしては「生気(なまけ)」の影響もあるのかもしれない。
「弥次『……北八、手めへどふぞしたか。とんだ顔つきがなまけて来た』 北八『イヤ、今朝からどふしてか虫歯がいたくてならねへ』」(「滑稽本」『続膝栗毛』:顔つき(表情)が、北八の表情、と明瞭に判断できない不活性なものになる)。
「女武者の勢(いきおひ)には……急度(きつと)鍛ふた名作でも、後はなまけて刃も立(たた)ず」(「浄瑠璃」『源頼家源実朝鎌倉三代記』:刃(やいば)が明瞭に刃(やいば)にならない)。
「きのふとなまけ、けふとづるけ、いつしか四とせ…」(「滑稽本」『浮世床』:明瞭に、仕事をしている、と言える状態にならない)。
「かみさま『……お玉さん今日はお手習(てなれへ)はおやすみかへ』 娘『イヽヱ』 かみさま『ハヽア。おなまけだね』」(「滑稽本」『浮世風呂』)。