◎「なほざり(等閑)
「なほそやり(直背遣り)」。「なほ (直・尚)」はその項。「そ(背)」は、後ろ向きにあること(その項・2023年7月4日)。「そやり(背遣り)」は、後ろ向きへ遣(や)ることであり、「Aをそやる(Aを背遣る)」はAを目の向いていない背のほうへ放置しそのままにするような行為。その「そやり(背遣り)」が日常的な、生活常態となっていることが「なほそやり(直背遣り)→なほざり」。
「なほさりに秋の山へをこえくれはおらぬ錦をきぬ人そなき」(『御撰和歌集』)。
◎「なほし(直衣)」
「なほをし(直着し)」。「なほ(直・尚)」にかんしてはその項(2月4日)。「をし」は、「え(得)」の尊敬表現であり、食べる、着る、などを表現し、この場合は、着るもの、の意。「なほをし(直着し)」は、平常の(日常の常態となっている)着物、の意。位階による服規定などに縛られていない、着る人の自由に任されている服です。ただし、たとえば平安時代の、公家の服を言い、庶民のそれを言うわけではない。音(オン)は慣用化して「のうし」にもなる。
「殿上人の、なほしぬぎたれて扇やなにやと拍子にして…」(『枕草子』)。
「襴衫 ………須曽豆介乃古路毛 一云奈保之能古呂毛」(『和名類聚鈔』)。