◎「なびき(靡き)」(動詞)
「なみいき(並み行き)」。「なみ(並み)」はその項参照。「なみいき(並み行き)」は複数が同じような動態で進行すること。複数感は他の何かとの同化で(なにかに従い動くことで)表現されることもあり、その場合は「Aになびく」と表現される。他動表現は「なびけ」。
「秋風の末吹きなびく(奈婢久)萩の花ともに挿頭(かざ)さず相(あひ)か別れむ」(万4514:これは『万葉集』の最後から二番目の歌)。
「白栲の 袖さし交へて 靡(なび)き寝(ぬ)る…」(万481:外的力のままに寝る)。
「世の人(源氏に)なびき仕うまつること、昔のやうなり」(『源氏物語』)。
◎「なびけ(靡け)」(動詞)
「なびき(靡き)」の他動表現。意味は、なびくことをさせる、という使役型他動表現になる。調理などで、材料を胴切りにすることを、車切り、と言い、斜めに切ることを、なびけて切り、などと言ったりもする。
「おほならば(凡者:あなたになんの思いもないなら)誰が見むとかもぬばたまの我が黒髪を靡(なび)けて居らむ」(万2532)。
「楠(くすのき)其勢を合せて、七百余騎にて和泉・河内の両国を靡(なび)けて、大勢に成ければ…」(『太平記』:従属させて、ということ)。