◎「なはしろ(苗代)」
「なへはしろ(苗端代)」。苗(なへ)の専域たる、本田の端の小さな田たる「しろ(代)」。「しろ(代・城)」はその項(2023年2月11日)。
「苗代(なはしろ:奈波之呂)の小水葱(こなぎ)が花を衣(きぬ)に摺(す)りなるるまにまにあぜか愛(かな)しけ」(万3576)。
◎「なば」
「ぬははば(~ぬ這はば)」。「ぬ」はいわゆる完了の助動詞。「ははば(這はば)」は「はひ(這ひ)」が仮定表現の「ば」で表現されており、発生するならば、ということ。「~ぬ」で認了される確かなこととして仮定が表現され、それにより仮定される状態への強い思いが表現される。
「わが背子が国へましなば(奈婆)ほととぎす鳴かむ五月はさぶしけむかも」(万3996)。
「いささくら我もちりなむひとさかりありなは人にうきめ見えなむ」(『古今和歌集』:…私も散る。一盛りあったら人は(見返されて)憂き目を見るだろう)。
◎「なばり(隠り)」(動詞)
「なみまり(波間り)」。つまり「なみま(波間)」の動詞化。「なみま(波間)」の状態になること。波間に入り姿が見えなく(見えにくく)なったような状態になること。意味は「かくれる(隠れる)」に似ている。『万葉集』では地名「なばり(名張)」が「隠」と書かれたりもする(万43、60)。「なまり」とも言いますが、これが原型に近いものでしょう。
「既に惶(おひ)え急ぎ走りて竹林に竄(ナハル)」(『石山寺本金剛般若経集験記』平安初期点)。