◎「なだめ(宥め)」(動詞)
「なでよわめ(和で弱め)」。均質化・並準化し緊張や勢いを弱めること。心情や、ものごとの効果の高まりや強さを低めたり弱めたりし並準化し穏やかにする。「(厳しい)処罰をなだめ」(処罰を弱め軽くし)、「激昂する人々をなだめ」(昂奮をしずめ)、「怨霊をなだめ」。
「粟田廣上(アハタノヒロベ)安都堅石女(アトノカタシ)ハ随法(ノリノマニマ)斬ノ罪ニ行賜(オコナヒタマフ)ベシ。然(シカレドモ)思(オモ)ホス大御心(オホミココロ)坐(マス)ニ依(ヨリ)テ免(ユルシ)賜(タマ)ヒ奈太毎(ナダメ)賜(タマ)ヒテ遠流罪(ヲムルノツミ)ニ治(ヲサメ)賜(タマ)ハクト…」(『続日本紀』宣命)。
「山門の大衆憤り蜂起して……………入道相国やうやうになだめ給へば、山門の大衆しづまりぬ」(『平家物語』)。
◎「なだらか」
「なでやはらか(撫で柔らか)」。物的に柔らかいという意味ではなく、撫での進行、接触の進行が柔らかく刺激的抵抗感がなく進行することを表現する。それが物的対象であれば、その表面での進行が抵抗が弱い印象であり、(人の人格・性格や心情のあり方も含め)ことであれば、そのこと自体の進行が他に与える抵抗が弱い。
「御桟敷の前になだらかなる石、かどある巌(いは)などひろひ立てたる中より…」(『宇津保物語』)。
「(桐壺更衣の)さま・かたちなどのめでたかりしこと、心ばせのなだらかにめやすく、憎みがたかりしことなど、いまぞ思(おぼ)し出づる」(『源氏物語』)。
「早舟といふ物にて、さまことになむ構へたりければ、思ふ方の風さへ進みて、あやふきまで走りのぼりぬ。響(ひびき)の灘(なだ)もなだらかに過ぎぬ」(『源氏物語』:こともなく無事に過ぎた)。「」(『類聚名義抄』)。
◎「なだれ(頽れ)」(動詞)
「なでたれ(撫で垂れ)」。何かを撫でて行くように断片化し落下していくこと。木の枝や斜面における積雪の自然落下を表現したことが起源かもしれない。連用形名詞化の「なだれ(雪崩)」は斜面におけるそれ。地形などがそのような印象であることも言う。
「雪おもる岨(そは)の下柴岩根松なだれて埋(うづ)むたにのささ原」(『草根集(サウコンシフ)』)。
「…暫(しばらく)かかへ奉れ共、馬ははやり、主(藤原頼長)はよはらせ給ひて、(馬から)なだれおちさせ給ひけり」(『金刀比羅本保元物語』)。