◎「なぎ(薙ぎ)」(動詞)
「なめ(並め)」その他の「な」と同じ平均化・均質化を表現する「な」による動詞(→「な(二人称)」その「・N音の語音性」・12月7日)。何かを全体的に平均化する印象の行為をすること。他動表現。
「是(こ)は草(くさ)那藝の大刀(たち)なり。那藝(なぎ)二字以音」(『古事記』)。
「『……茅(かや)の葉の如くに反(そ)つたる白柄の大長刀黒漆の大太刀左右の手に持つままに同宿十余人前後に立て手掻門より打つて出でたり』……『多くの官兵馬の脚薙がれて討たれにけり』」(『平家物語』)。
「なぎなた(薙刀):なぎになた(薙ぎ似鉈):薙ぎ切るものであり鉈(なた)に似た印象のもの:上記「茅(かや)の葉の如くに反(そ)つたる白柄の大長刀」は、薙刀(なぎなた(そういう形体のもの))、でしょう」。
◎「なぎ(和ぎ)」(動詞)
平均化・動態均質化を表現する「な」(→「な(二人称)」その「・N音の語音性」)による「なぎ(均質ぎ)」と「なぎおひゐ(均質ぎ覆ひ居)」がある。
・「なぎ(均質ぎ)」。これは「なぎ(薙ぎ)」と同じ平均化・均質化を表現する「な」による動詞ですが、「薙ぎ」が平均化・均質化を客観的な何かに働きかけるのに対し、「なぎ(和ぎ)」は、何かが平均化・均質化した状態になること。たとえば海がそうなることはあっても、人が海を「なぎ(薙ぎ)」、は事実上ないわけであり、この「なぎ(均質ぎ)」は名詞でしか現れない。四段活用。
「あさなぎ(朝凪:朝奈祇)」(万3243)。「ゆふなぎ(夕凪:暮名寸)」(万1165)。
・「なぎおひゐ(均質ぎ覆ひ居)」。これは何か(特に海)全体が動態均質化した状態にあること。こちらの「なぎ(和ぎ)」は上二段活用。
「海つ路(ぢ)のなぎなむ(名木名六)時も渡らなむかく立つ波に船出すべしや」(万1781)。
「吾(あ)が思(も)へる心なぐやと(奈具也等)…」(万3627)。