◎「なき(鳴き・泣き)」(動詞)
「ねわき(音沸き)」。音(ね)が沸く動態になること。人にかんしても、鳥その他、人以外の動物にかんしても、音を発するある種の昆虫にかんしても、言う。また、人が泣(な)く場合、涙も流れることから、ただ涙が溢れ流れているだけでも、「ないている」と言われる。
「かはづ鳴く清き川原を今日見てはいつか越え来て見つつ偲はむ」(万1106:カエルが鳴いている)。
「ともすれば人まには月をみていみじく泣き給ふ」(『竹取物語』:かぐや姫が、一人になると月を見、泣いている)。
◎「なきがら(亡屍)」
「なきひがから(無き「ひ」が殻)」。「ひ」は「たましひ(魂)」にある「ひ」(→「たましひ(魂)」の項)。「が」は所属を表現する助詞。「なきひがから(無き「ひ」が殻)→なきがら」は、無くなってしまった魂(たましひ)の殻(から:抜け殻)。
「今一度かのなきからを見ざらむがいといぶせかるべきを」(『源氏物語』)。