◎「ながし(長し)」(形ク)
「なげきは(投げ際)→なが」の形容詞表現。「なげ(投げ)」は思い(思念・想念)をなげる。「なげきは(投げ際)」は、思いを投げるその行く果ての際(きは)・限界。思いが及ぶ限界であることを表現する。空間(物体)に関してであれ時間に関してであれ心情や思いに関して(たとえば、「長い目」「気が長い」)であれ言う。
「人(ひと)皆(みな)は今は長しとたけと言へど君が見し髪乱れたりとも」(万124:「たけ」は、たため、というか、きちんとまとめろ、というか、そういう状態にしろ、ということ)。
「大君(おほきみ)に 堅(かた)く 仕(つか)へ奉(まつ)らむと 吾(わ)が命(いのち)も 長(なが)く(那賀俱)もがと…」(『日本書紀』歌謡78)。
「咲く花も をそろはいとはし おくてなる 長き心に なほしかずけり」(万1548:「をそろ」は、軽々しい男、のような意)。

◎「ながた」
「ねはかはやた(根努果早田)」。「はか(努果)」は、努力の成果(その項)。「はや(早)」は、時間的に早いわけではなく、活性力が驚くべきものであること、盛んであることを意味する(→「はや(早・逸)」の項)。「ねはかはやた(根努果早田)→なかた」→根の努力の成果がその活性力が驚くべきものであること、盛んであること、とは、土地に根づき育ち繁殖するその繁殖力が強靭・旺盛であることを意味する。植物、この場合は稲、をそうした状態にする力を備えている田(た)が「ねはかはやた(根努果早田)→ながた」。
「……稻(いね)を以(も)ては水田種子(たなつもの)と爲(な)す。……卽(すなわ)ち其(そ)の稻種(いなたね)を以(も)て、始(はじ)めて天狹田(あめのさなた)及(およ)び長田(ながた)に殖(う)う」(『日本書紀』)。
「神世よりけふのためとや八束(やつか)穂に長田の稲のしなひそめけむ」(『増鏡』:これは「なかた」を「ながた(長田):長い時間、歳月、続く田」と解したものでしょうし、ながた、や、ながだ、という語も伝承されているのでしょう)。

◎「ながつき(長月)」
月暦九月の称。→「むつき(睦月)」の項。月暦(旧歴)名はすべて「むつき(睦月)」の項にまとめられる。