「ねあ(音吾)」。「ね(音)」の起源は自然音響であり、それは音(おと)の変動であり、その影響や作用を意味する。「あ」はその全的な完成感により言語主体を表現し、また、「あれ」の「あ」のように、特定性・個別性のない情況にあるもの・ことも表現する。その「あ」がね「ね(音)」となっている語が「ねあ(音吾)→な」。「ね(音)」は影響・作用であり、その相関的・相互関係的影響・作用、人間的・社会的影響・作用は「ね(値・価値)」にもなる。「な(名)」は「ね(音)」として現れる言語でもあり、それは「ね(値・価値)」にもなり、言語粉飾で「ね(値・価値)」を現せばそれは「なばかり(名ばかり):実態がない」ということも起こる。また、文字がもちいられるようになり、「な(音吾:名)」がある形態の外的視覚痕跡で現されたとき、その外的視覚痕跡も「な」と表現され、その外的視覚痕跡はやがて「モジ(文字):「モンジ(文字)」の「ン」の無音化」と言われることが一般となる。つまり、「な」は文字も意味する→「かな(仮名):平仮名」「まな(真名):漢字」(「かな(仮名)」「まな(真名)」にかんしては「かな(仮名)」の項)。
「故(かれ)此(こ)の王(みこ)、二(ふた)り女(むすめ)あり、兄(いろね)の名(な)は蠅伊呂泥(はへいろね)、亦(また)の名(な)は意富夜麻登久邇阿禮比賣命(おほやまとくにあれひめのみこと)」(『古事記』)。
「…惜(あたら)しき(もったいない) 清きその名(な)ぞ おぼろかに 心思ひて 空言(むなごと)も 祖(おや)の名(な:)絶(た)つな 大伴(おほとも)の 氏(うぢ)と名に負へる(名尓於敝流) 大夫(ますらを)の伴(とも)」(万4465)。
「酒の名を聖(ひじり)と負ほせしいにしへの大き聖(ひじり)の言(こと)の宣(よろ)しさ」(万339)。
「又(また)高麗(こま)の上(たてまつ)れる表䟽(ふみ)、烏(からす)の羽(は)に書(か)けり。字(な)、羽(は)の黑(くろ)き隨(まま)に、既(すで)に識(し)る者(ひと)無(な)し」(『日本書紀』:この「な」は文字)。
「聲(声) …コヱ…ナ……オト…ナラス」、「名 …ナ」、「字 ……ナ」(『類聚名義抄』)。