◎「とら(虎)」
「とふをら(鋭斑緒等)」。「と(鋭)」は非常に効果的であったり(刀ならよく切れる)といったことを意味する(→「と(利・鋭)」の項)。この場合は力強く非常に効果的なのです。強く恐ろしい。「ふ(斑)」は、「ふ」の発生感は存在感となり、それは客観的対象相互の相互独立的な存在感ともなり、「ふ」により不規則不定形な独立的色彩や形象がそこに現れたりもする。「を(緒)」は線状・帯状の長いものを意味し、「ふを(斑緒)」はその「ふ(斑)」が帯状の長いものになっている。この「とら」はある哺乳類生物の名ですが、この「ふ(斑)」の「不規則不定形な独立的色彩や形象」はその体表に現れている黄色と黒の、幾筋もの帯状も思わせる、模様を意味する。「ら(等)」は情況を表現し複数を表現しますが、その幾筋もの帯状も思わせる模様が複数であり体表全体がそうなっていることを意味する。すなわち、「とふら(鋭斑等)→とら」は、強く恐ろしい、体表全体が幾筋もの不規則な帯状を思わせる模様のもの。
「…敵(あた)見たる 虎か吼(ほ)ゆると…」(万199)。
「虎 ………和名止良 山獣之君也」(『和名類聚鈔』)。

◎「どら」
「ダウラン(道乱)」の音変化。(人のあるべき)道が乱れている、の意。「どら息子」。「どら打つ」(放蕩する)は、同音の打楽器「銅鑼」にかけた洒落表現。
「『…夫(それ)でね、お婆さんは、おとつさんの事を、どら殿と計(ばっかし)お云ひでね。いつそお憎(にく)がりだよ』」(『浮世風呂』)。
「どら息子」。「どら猫」。