◎「とぶとりの(枕詞)」
(飛ぶ鳥のように)「あはすか(会はすか)」(お会いになりに行くのか)、(飛ぶ鳥の)「ああ…すか(ああ…巣か)」(ああ、二人の家か:「す」は(後世で言う)家(いえ)を意味する→「す(巣)」の項・2023年2月21日参照)、これらが地名「あすか(明日香・飛鳥)」に掛かる。すなわち、その枕詞。この枕詞は柿本人麻呂が作ったとも言われている(万194、196)。「飛鳥」を「あすか」と読むのは「とぶとりの(飛ぶ鳥の)」が地名「あすか」の枕詞であることによる。地名「あすか(明日香・飛鳥)」の語源に関してはその項(下記再記)。
「飛ぶ鳥の明日香(あすか)の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ」(万78)。
◎「あすか(明日香・飛鳥)」
「あはすかは(会はす川)」。「あはす(会はす)」は「あひ(会ひ)」の尊敬表現。若い二人が会う。そこには川がある。「飛鳥川(あすかがは)」です。お会いになる川の地、の意。若い男と女が会い、行く地。つまりデートの地です。ただしこれに関しては何の傍証も無い。そのように読めるということです。遠い古代、のちに「あすか」と呼ばれる地はそういう地だったのでしょう。「明日香」「飛鳥」という表記は良い字を選んだもの。「飛鳥」という表記は「飛ぶ鳥の……」という「あすか」の枕詞に由来する。この枕詞は柿本人麻呂が作ったとも言われている。

◎「どぶろく(濁酒)」
「ドブンロク(土分禄)」。士分(シブン:武士(さむらい)の身分)の禄(ロク:俸給)ではなく、土分(ドブン:土の身分。土のように(自由に)生活している者たち)の禄だ、という表現。「禄(ロク)」は俸給であり、これが社会的評価としての誉れになった。これは濾過していない酒を言いますが、濾過した清酒のように澄(す)ました酒ではないということです。
「酒の名も所によりてかはりけり伊勢屋の酒はよそなどぶろく」(「仮名草子」『昨日は今日の物語』)。