「どのはてら(何の果てら)」。「ど(何)」はその項(9月9日)。なにものかやなにごとかを希求していること、それがないこと、が表現される。「の」は助詞。「はて(果て)」は何かを経過した方向にあることを表現し(その項)、「どのはてら(何の果てら)→どなた」は、判断が成り立たない、不明な思念内容を経過した情況、そうした情況にあるもの・こと(地点や地域など)を表現する。同定の成立しない不明な人を尊重感をもって表現する人称にもなる。
「是れは何(いづ)れの国よりどなたへ参ずる人ぞ」(『保元物語』:不明な方向・地域)。
「そもそも甲斐・信濃と申すはどなたにて候ふやらん」(『平治物語』:不明な方向)。
「是へお出なさるはどなたでござる」(「狂言(雲形本)」『毘沙門連歌』:人であることは知られるが同定不明の人)。
・「あなた(彼方・貴方)」の「あ」は「あ」の音(オン)の全感・完成感が客観的に特定性・個別性なく存在感を表現する(「あ(彼)」の項)。
・「かなた(彼方)」の「か」は本質としてはその詠嘆性により、現実性・具体性のない、想的なことを表現する(「か(彼)」の項)。
・「そなた(其方)」の「そ」はS音の動感、それによる記憶への作用・記憶再起性、と、O音の目標感・客観的対象作用・存在感により思念的に何かを指し示す効果を起こす(「そ(其)」の項)。
・「こなた(此方)」の「こ」はK音の交感とO音の目標感(「おき(置き)」の項参照)により気づき対象感(存在感)が生じ、現在性(現(ゲン)に在(あ)り、の性)・特定性を表現する(「こ(此)」の項)。
「~なた」の部分はすべて同じ。