◎「どす(短刀)」
「ドウスン(胴寸)」。「ドウ」は「胴」(身体の首と手足を除いた部分)の日本での慣用的な音(オン)。「スン」にかんしては、長さの単位たる「寸(スン)」(約3センチ)の影響により、短いことや少ないことを表現する「すん」がある(※)。すなわち、「ドウスン(胴寸)→どす」は、胴が短い、ということですが、これが、短刀、さらには、一般に「短刀」として流通する刀よりも短い、刀の俗称になっている。刀剣界の正式名称としては、「短刀」は長さ一尺(約30.3cm)以下の刀を言う。「どす」は俗称であり、単に小さな刀類であり、様式も整っていない。
「悪党なれば、斯(こ)う云う時の為に懐にどすといって一本匕首(あいくち)をのんで居るが…」「…と懐に隠し持ったる短刀(どす)を引抜きましたから…」(「落語」『真景累が淵』)。
「どすのきいた(効いた)」は、懐に「どす」を忍ばせたような、危険を感じる、ということ。
(※) 「すん」にかんして。
「いつけい(一茎?)のすき(鋤)をになひ、すむの田をかへし。いつし(一枝?)のくはのはをとり、けむはく(絹布)のたぐゐ(類)をいとなみ」(「幸若」『いるか』)。
「すんのゆだんも候はず」(「御伽草子」『猫の草子』)。
◎「どす」
「ドンうす(曇薄)」。「曇(ドン)」は、日の有る明るさがなく、くもっていること。「ドンうす(曇薄)」は、ドン(曇)」であり、その印象が薄く、なんとなく感じられること。「どす黒い」。