◎「どさくさ」

「どさくさ(どさ草)」。「どさ」は、思念的になにかが確認される「と」が濁音化しその多量性や鈍重さを表現する「ど」と「さ」のS音の動感とA音の情況感により情況動感を表現し鈍重感や多量感のあるなにかが置かれたりすることを表現する擬態の「どさ」。「くさ(草)」は植物のそれ。「どさくさ」は、刈り取った大量の草が「どさ」と置かれ自分はその中にあるような状態になり、自分の環境がまったくでたらめ無秩序な草(くさ)におおわれたような状態になること。混乱に乗じてなにごとかをおこなうことを「どさくさまぎれに」などとも言う。

「酒のまぎれどさくさに、硯紙とりよせて、墨すりてあてがひ、一代見すてじとの誓紙をにぎり」(「浮世草子」『好色一代女』)。

 

◎「とざし(閉ざし)」(動詞)

「とざし(戸差し)」。「さし(差し)」は障害を設けること。(門(と・9月4日)に)戸(と・9月4日)を差(さ)すこと。この「さし(差し)」は閉鎖感を生じさせること→「さし(射し・差し(挿し・刺し・注し・障し・止し・鎖し)・指し)」の項(2022年6月25日)。「と(門)」は行き来のためにあり、この語は行き来できないようにすることを意味する。この「さす」は「鎖す」と書くことが多い。この語は「とざし」という名詞が動詞化したものでしょう。

「諸方の接待、および諸寺の旦過、みな門を鎖せり」(『正法眼蔵』:「旦過(タンガ)」は、禅宗の修行僧が一夜の宿泊をすることやするところ)。

「扃 …トサシ トヒラ」(『和名類聚鈔』:「扃(ケイ)」は『説文に』「外閉之關(関)也」とされる字であり「かんぬき」とも読まれる)、「鍵 ……トサシ」(『和名類聚鈔』:「鍵(ケン)」は「鉉也」とされる字であり、「鉉」はたとえば鉄製鍋につく蔓状のもちて。これが扉を開かぬようにする鍵(かぎ)になる)(『類聚名義抄』:ようするに、「とざし」は通路の行き来をできなくするもの)。

「扃 ……和名度佐之」(『和名類聚鈔』)。