◎「どか」
「ドこは(度「此は…」)」。「ど」はその項(「ど阿呆」などのそれ)。程度が予想限度を超えていることを表現する。「こは(「此は…」)」は、これは…、ということであり、ただ「は」による提示がなされることのみによる、衝撃や驚きを感じていることの表現。「ドこはと(度「此は…」と)→どかと」が、予想限度を超えて「これは…」と驚くような状態で、ということであり、予想もしていなかった何かが突然動かしがたい存在感で現れたりする。その動かしがたい存在感はその量的規模、その多さや大きさであったりもする。
似たような語で、大砲の発射などを表現する「どかん」があるが、これは擬音の「どん」と「かん」が同時に鳴り響いたような音ということ。
「乗付けぬ馬にどかと乗つたらばわるからう程に」(「狂言」『右流左止(うるさし)』:「どかと盗まれ」といった表現もある)。
「どか雪」。「どか儲(まう)け」、「(酒の)どか飲み」といった表現もある。
◎「とかげ(蜥蜴)」
「とをきはぎれ(と尾際切れ)」。「きは」が「か」に、「ぎれ」が「げ」になっているわけです。語頭の「と」は何らかの内容が思念化する「と」ですが、「ふと気づく」などのそれであり、ふと、予想もしていなかったことが起こる。なにごとが起こるかというと、尾(を)の際(きは)、尾とそれ以外の身の境界部分、が切れる。そういうものであることが「とをきはぎれ(と尾際切れ)→とかげ」。
トカゲなどが、非常に危険な状態に陥ったさいに尾(を)などを自ら切り離す(そして逃げたりする)ことを「自切」と言いますが、生物学的にトカゲに分類される生物がすべて自切するわけではなく、自切する昆虫などは他にもいますが、日本に原生するトカゲのほとんどは自切し、それがこの爬虫類の非常に印象的な特徴となりその名となっている。
「蝘蜒 ……一名蜥蝪 ……一名蠑螈 ……本草云竜子 一名守宮 和名止加介 常在屋壁故名守宮也」(『和名類聚鈔』:「常在屋壁故名守宮」と言っていますが、ここで言っているのはヤモリか)。
「桶をよせてうつしければ、あぶ、はち、むかで、とかげ、くちなはなど出でゝ…」(『宇治拾遺物語』)。
◎「とかげ(常陰)」
「とよかげ(響陰)」。「ひか(日陰)」ではなく。「とよかげ(響陰」。日(ひ)の陰(かげ)ではなく、響(ひび)きの陰(かげ)。響きが、なにかに隔てられその奥にあるような状態になるところ。世界としてその情況が奥まっているところ。
「もののふの石瀬の社の霍公鳥(ほととぎす)今も鳴かぬか山の常影(とかげ)に」(万1470)。
「夕されば霧たちくらしをぐら山やまのとかげに鹿ぞ鳴くなる」(『金槐和歌集』)。