◎「どうづき(胴突)」
「ドアウづき(土奥突き)」。「アウ」は「奥」の音。意味は、おく(奥)。土(つち)の、表面ではなく、奥(おく)を突く印象で突くこと。たとえば丸太を(岩でもよいが)綱で引き上げては落とし地盤を突き固めること、あるいは、それにもちいる装置。「きもをやつぶすどうづきの音(をと)」(「俳諧」『口真似草』)。
動詞「どつき(ど突き):どづき、とも言う」は鈍重に当たることを表現する擬音「どん」による「どんつき(どん突き)」。
◎「とうど」
「トウド(投度)」。「度(ド)」を投げ込む、投げ入れる、のような意なのですが、問題は「度(ド)」の意味です。この語は、俗に、「温度(オンド)」や「程度(テイド)」などのように、作用の程(ほど)、といった意味で言われ、一般的に期待されるそれが過ぎれば「度(ド)が過ぎる」。しかし、この語は『説文』に「法制也」とされる字であり、それは、想の整え、を意味する(→「ちゃうど(丁度)」の項・3月15日)。物や事象の規模におけるその「ととのへ」が一般に用いられているような意味での「度(ド)」。一方、整えられた人間性一般を得る努力へ入ることが「トクド(得度)」。これは出家を意味する。そして、ありきたりな生活の中にあるとき突然、その、整えられた人間性一般(得度した人間性一般)、が放り込まれ、それを、あるいは、そうであるようなことを、現象として現すこと、それが「とうど」。たとえば、完全に得度しまったく不安な揺らぎを感じさせない様子である人が座についたり、あるいは現象としてそんな出来事が起こったりする。
「大きやかなる者、板敷にとうと着ぬなり」(『今昔物語』)。
「二人の若をかきいたき、父正清のふしたりし、前後にとうとをろしをき」(「幸若」『鎌田』)。
「『…先今日の卦躰がとうど是に當ておりまする』」(「狂言」『居杭』:卦躰がまったく不安定さのない確かさをもって現れた)。