◎「でぶ」
「デンぶる(伝ぶる)」。「る」は無音化した。「伝(傳):デン」は伝(つた)わること。「ぶる」は、「ふり(振り)」に由来し、ふるえることを表現する擬態。ただし、「デンぶる(伝ぶる)」が直接に「でぶ」になっているわけではなく、当初は、「デンぶるり(伝ぶるり)→でぶるり→でぶり(強意がはたらき、でっぷり)」という、動詞ではなく、(ぶらり歩く、がぶりと噛みつく、のような)動態情況表現があり、「でぶ」がその語幹のようにはたらき「でぶでぶ」という表現も現れ、そして「でぶ」がそうした状態の人を表現する語になっていったのでしょう。「でぶ」という語の現れは時期的に遅い印象を受ける。そうした意味の「でぶ」は、震(ふる)えが伝(つた)わる者、という意味なのですが、どういうことかというと、その身に固く引き締まった印象がなく、柔らかくふくらみ、刺激を加えるとそれによる振動が波となって全体に伝わり揺れそう、ということである。人の身体は骨・筋肉、皮だけではそうはならず、皮の下が柔らかな脂肪で厚く覆われているわけです。そうした身体が「でぶ」。
「でつぷりとしたをとこ、手ぬぐひをしぼりながら」(『浮世風呂』(1809-13年))。
「年は四十(よそぢ)に近づひて、色くろぐろとでぶでぶ太り」(「人情本」『明烏後正夢発端』(1823年))。
「足立のデブさんが、叱りでもすることか」(『今年竹』(里見頓(1919年))。
◎「では」
「~ぬにては・~ぬでは」。「ぬ」は否定。~ではないという条件では、の意。「家ではそうしている」などと言う場合の「では」は「にては」。この場合の「では」はそれとは異なる。
「この女見では世にあるまじき心地し」(『竹取物語』:この女を見なくてはこの世にも無いような心地がし)。