◎「てば」

「とへむは(と経むは)」。「と」は助詞。「と」で思念化が生じ、その思念化した情況の経過として以下の叙述があることが表現され、この表現が仮定条件を表現する。そして、順接表現と逆接表現がある。~たら、~だら、~ったら、に意味は似る。つまり、「とへむは(と経むは)→てば」と「とあるは(と有るは)→たら」は意味が似るわけです。

「君し踏みてば玉と拾はむ」(万3400:あなたが踏むなら玉(宝石)として拾おう。あなたが踏んだら、に意味は似る)。

「梅かかを(香を)そて(袖)にうつしてととめては(てば)春はすく(過ぐ)ともかたみならまし」(『古今和歌集』:とどめたら、に意味は似る)。

「にくい事 ………やすいかもじやとおもたてば…」(『軽口頓作』:「にくい事」は他にもある。思ったら…。これは逆接。本書に「にくい事」は他にもある)。

「『オイオイ姉さん、シャツを持ッてッとくれッてば……オイ……ヤ失敬な、モウ往いっちまッた』」(『浮雲』(二葉亭四迷):これも逆接。「持ッてッとくれ」と声をかけたがしかし…)。

「お母さん! お母さんてば! 聞こえないの?」(お母さんたら、に意味は似る)。「だめだってば」。

 

◎「では(出羽)」

「いでは」の「い」が落ちたもの。「いでは」は、「いではら(出で原)」の「ら」の消音化。「いでは」までは古い文献にある。「いではら(出で原)」は、海原を「はら(原)」と表現し、(自分が)出た原、の意。京都あたりから北東へ向かい、陸路、福井、石川、富山を抜け、新潟市あたりから海へ出たのでしょう。その先の行き着く地域が「いでは」です。日本東(ひがし)北西部の古い地域名。後の秋田県・山形県あたり。

「むねとをか(が)いては(出羽)のうみ(海)にてくたり(下り)しにつかはしゝ(遣はしし)」(『元輔集』) 。

「出羽 以天波」(『和名類聚鈔』)。

「なるこの湯より尿前(しとまへ)の關にかゝりて出羽の國にこへん(超えん)とす」(『奥の細道』)。

山形県の出羽三山神社に「いでは神社」(羽黒山)がある。