◎「つれづれ(徒然)」

「つれ(連れ)」(その項・8月5日)の自動表現の繰り返し。何か(情況)との同動感が次々と生じていることが表現されていますが、ただそれが次々と生じるだけであり、ただ情況だけが流れ、主体はそれに応じて流れているだけ(主体的な対応はなく(なにごとかに追われるでもなく)、空虚でむなしい)という状態が表現されている。特別に意識されないありふれた、日常的な、といった意味にもなる(→「つれづれの釜」(特別なものではない日常的な釜))。他の特別なことなくある動作が続くことも意味する(→「つれづれ眺むる」)。

「この草子……つれづれなる里居のほどに書き集めたるを…」(『枕草子』)。

「(馬の頭なる翁が)しひて御室(みむろ)にまうでてをがみたてまつるに、(惟喬の親王が)つれづれといとものがなしくおはしましければ…」(『伊勢物語』)。

 

◎「つゑ(杖)」

「つゆえ(露枝)」。歩く際、草葉の露を払う枝。歩行の便や補助にも用いる。

「…天地の 至れるまでに 杖つきも つかずも行きて…」(万420)。

「杖 ………和名都恵 以竹木為之所輔老人也」(『和名類聚鈔』:これは行旅具の部にあるもの)。「杖 ………和名都恵 皆削去節目長三五寸許」(『和名類聚鈔』:これは刑罸具の部にあるもの:古く、杖(つゑ)で打つ刑罰があった。江戸時代でも「たたき(叩き)」と呼ばれる刑罰があった(ただし、その刑を受けるのは男だけ))。